事業内容
(2)平成30年度調査研究
【調査研究】日本の原風景『奈良・御所』の魅力を支える民泊とは
「原始の風景や信仰ほど、人の想像力をそそるものはない。紀州や吉野への往復の途上、えたいの知れぬ魅力にひかれて、何度私は葛城のあたりをさまよったか」。
白洲正子氏は、葛城山の麓である御所を何度も訪れては、その魅力に魅了されたことを「かくれ里」に記している。
調査研究で御所を訪れる中で、改めて御所(ごせ)という名前の神秘性に気づかされた。そして、その土地に昔から伝わるパワーのようなものに導かれるように、出会いを重ねていった。
今回、民泊をテーマとする際、奈良県北部ではなく、奈良県全体に寄与する報告書にするにはどうしたらいいか、と考えた。数あるまちの中から、本当に偶然ではあったが、私たちは「御所(ごせ)」に出会った。
とはいえ当初は、奈良市の東大寺などに比べると御所はどうしても観光資源は乏しいのではないか、とあまり大きな期待をしていなかった。しかし、通うたびに発見があり、「これは単に魅力が伝わっていないだけなのではないか?」と強く感じるようになった。
御所は、江戸時代の検地地図のまま残る「ごせまち」や葛城山・金剛山の麓にある大自然、古代から続く歴史的建物だけでなく、芸術家やスポーツ選手など人材も数多く輩出している。かつて商業も発達し、交通の要所でもあったことが、人を惹きつけ、留まらせ、新しい何かを生み出す磁力となったと考えられる。
さらに神々に引き寄せられるように、「民泊」開業事業者の方が、御所にも3件続けて現れた。これは本当に理屈では説明できないと感じている。
前回の「奈良うまいもんあり調査研究」における「デザイン思考」に続き、今回も日本では比較的新しい概念である「エフェクチュエーション理論」に基づき、調査を進めた。民泊という市場自体がまだ日本ではこれからということもあり、アントレプレナーシップ(起業家精神)に依拠したエフェクチュエーションは非常に相性がよいと感じている。
今回も、御所のまちを歩く中で、本当に多くの方々に協力いただいた。プロトタイプで行ったツアーでは、行く場所行く場所すべてで、心温まる「おもてなし」を受けた。伊勢に参る「おかげ参り」から続く、おもてなし文化に触れた瞬間だと感じた。私たちも微力ながら、奈良県を一緒に盛り上げていきたいと感じている。